落ち着いている

締め切りまで何もしない

昔のこととこれからのこと

結局、ひどい彼はセフレになった。お互い合意のもとでそうなっている。正直、連絡頻度が減っただけで、やることはかわらない。夜中の電話がなくなって寂しいような気もするけど、安眠はできる。もう始発で帰らなくていいし、わけのわからない旅行に散財することもない。

彼は私が相当へこんでいると思っていたみたいだ。大丈夫、元気でやってますから。自惚れんなよ。


優しい男は、前の彼女との思い出のアルバムを見せてくれた。8年くらい付き合っていたので、旅行の写真がたくさんあった。これからもずっとバカップルでいようね、という彼女の手書きのメッセージはなんだか微笑ましかった。聞いたことのない彼の愛称も書かれていて、なんだか白昼夢みたいにくらくらした。そこには私の知らないきらきらした過去があった。


曰く、とても愛されていたという自覚はあるそうだ。当時はその愛が重すぎると感じていたらしい。飲みに行けば誰と飲んでるのか問い詰められ、最終的に男友達も含めて連絡先を消してと言われたらしい。猛烈だ。


でも、彼女から離れた今、その愛の深さに気づいて申し訳なくなっている様子だ。俺、彼女に刺されるかも、と言っていた。馬鹿かこいつ。自惚れんなよ。


そんな彼の話に相槌をうっている私も、結構間抜けな存在だと思う。彼女にはできないけど、話は聞いてほしい。同じベッドで。


いつか私は男の前からいなくなるだろう。写真を1枚も残さず、連絡先も消して。まるで幻のように。

その日が来るまでは、男の懐かしい話を聞いていたいと思う。