彼には正式に振られた。なんと振られたのだ。散々な仕打ちにあった結果、性格が合わないという理由で振られてしまった。立ち直れないわ。
優しい男の腕の中で理由は言わず少し泣いた。私のことを好きだと言ってくれる。
好きって、じゃあ、どうするの、と聞いたら、たくさん楽しい思い出を作ろう、と言ってくれた。
たくさんの楽しい思い出。
彼とは楽しい思い出があまりない。いつも心のどこかで、わたしはピルまで飲む便利なセフレだという気持ちがあった。2人で撮った写真も一枚もない。
楽しい思い出を、たくさん。
そんな当たり前のことが、なんだかすごく嬉しくてまた少し泣いてしまった。