落ち着いている

締め切りまで何もしない

今夜、ホテルピアニシモで

駅からほど近いレストランで食事をした。お互いの仕事や趣味の話をして、生まれた場所やこれまでの人生の話をした。
最後、彼がイカ墨パスタを食べたいというので、注文した。案の定、お互い口が真っ黒になったので、私は早急に化粧室に行った。なにしろその日が初対面だったのである。
このイカ墨パスタの件以外にも、いくつか覚えていることがある。
夜の公園を散歩したこと、ベンチに座って話したこと、なんとなくキスする雰囲気になって、実際キスしたこと、ホテルピアニシモに行ったこと。
結局、お酒を飲んでいた彼は最後までいけなかったけど、私のことを何度もかわいいと言ってくれた。一生分とはいかないまでも、四半世紀分くらいは言ってくれた気がする。
でもそのとき好きな人がいたので、彼女にはなれないこと、もう会えないことを伝えた。
ホテルからの帰り道、どちらからともなく手をつないだ。こんな風に、もう会えないことがわかっている帰り道は初めてだったし、あれ以来一度もないままだ。