落ち着いている

締め切りまで何もしない

透明なわたし

深夜に私の家に来た男は

少し前まで付き合っていた彼女の話をベッドでしている

彼女とはとても気があったし

きっと前世はひとつの魂だったんだ、と

彼女のためならなんだってしたし

本当に、彼女がすべてだったんだ


彼は饒舌に彼女の素晴らしさを教えてくれたけど、その彼女はもういない。

すでに他人のものだ。

そもそも彼と出会ったときにはすでに婚約者がいたそうだ。


前世で結ばれなかった恋人たちが、いくたびも違う世界線で出会い、悲劇を重ねていく物語はよくあるけれど、


その情熱的な話を彼の肩越しに聞いている私は、そうした物語の中ではいったいどんなキャラクターになるんだろう


そんなことを考えながら、静かに夜は明けて行った