落ち着いている

締め切りまで何もしない

夜の底にいる

彼はとてもかっこいい。素敵なところがたくさんある。


お酒にくわしい。

飄々としていて、

ほんとうに楽しそうに笑う。

音楽が好きで、楽器が得意で、

頭がよくて、

スマートに料理をサーブする。

お店の人とさりげなく、センスの良い会話をすることができる。

ひとりでなんでもできるし、

みんなで何かすることも上手。

周りをよく見ていて、

あまりにさりげなくフォローするので、

みんな彼のおかげで気持ちよく過ごせていることに気づかない。

本当は一人でした方が早い仕事も、後輩を育てるために必ず2人でする。

全然太らないし、スーツがよく似合う。

歩くのが早くて、わたしは置いていかれるけど、少し先で待っていてくれる。

わたしの機嫌が悪い時は、先回りして解決してくれる。

ときどき渋い横顔で通りを見ていて、

何か考えていることがある。

わたしの知らないことをたくさん知っていて、えらそぶることなく教えてくれる。

文化や芸術を愛し、孤独が好きだけど、

意外と涙もろくて、熱い一面もある。

無邪気で、大人で、男らしくて、繊細。

そしてずるい。


家庭のことはほとんど話さないけど、

日付が変わる前には部屋を出ていく。


キスはしない。

理由はわからない。


そんな感じで明日、ちょうど一年が経つんだなってぼんやり思った。


私はどんどん好きになってしまって、夜を持て余すことがあるけど、

彼は好きとかそんな素振りはみせない。

いつも同じトーンで、凪いでいる。


私のことが特別好き、というわけではなさそうなところが、

私が彼を特別好きな理由のひとつであり、寂しくなる理由のすべてでもある。