落ち着いている

締め切りまで何もしない

ふいに夜がくる

彼は私との間に、居心地の良さや癒し、適度な刺激を求めていて、人間としての義務は家庭で果たしている。


家庭の不仲を彼はぼやくけど、本当は円満に暮らしていることを私は知っている。

彼の前で、家族のLINEグループを読んだことがある。2年分くらい読んだところで携帯をとりあげられたけど、とてもかわいらしくてやさしそうな奥様と、賢そうな子供達と映った写真は、幸せな家庭そのものだった。


たとえば私が病気になったり、生活に困るようなことがあっても、彼は助けてはくれないと思う。急に現実が現れたら、まやかしの癒しやスリルは途端に瓦解してしまうだろう。


一方で、彼がぼやく家庭というやつの中で同じ不幸がおきれば、彼は全力で家族を支えるだろう。


私たちはケンカなんかしない。

暗黙の内に、お互いがこのまやかしの居心地の良さを保つことが義務だと思っているからだ。


でもときどき、私のことを振り向きもせず奥様を助ける風景を思うと、こころが苦しくなることがあるのだ。